飼い猫が脱走したこと

我が家の飼い猫が2年前に脱走し、35日後に見つかったときの話をします。

あの日は、窓を開けておけば涼しい風が入ってくる、エアコンも扇風機もいらない心地よい初夏の夜でした。

夜のランニングが日課となっていた私がウエアに着替えて玄関に行くと、いつもの様に猫が走ってついてきてお見送りをしてくれました。

「行ってくるね!待っててね!」と猫に声をかけたそのときが、猫を見た最後でした。

ランニングを終えて家に戻り、いつも迎えてくれる猫が来ないのでおかしいなとは思ったのですが、二階の家族の部屋にでも行っているのだろうと、さほど気にもせず、シャワーを浴び、髪を乾かしていました。

いつも私にべったりの猫なのですが、私が帰宅してから一時間以上経っていたのに一向に私の所へ姿を見せないことを不思議に思い、二階の家族の所へ確認に行きました。

しかし二階にもおらず、その時はまだ外へ出ているなどとは思いもしていなかたので、どこかに隠れているのだろうと思い、家中を名前を呼びながら探しましたが見つかりませんでした。

ふとリビングの窓を見ると網戸がわずかに開いていて・・・そこから外へ出ていったことがやっとわかりました。

網戸のままにしていたからです。

網戸に爪をかけると簡単に開いてしまいます。

カギを付けないとと思いながら、そのうちそのうちと先延ばしになっていました。

完全に私の不注意です。

慌てて外に出て、猫の名前を呼びながら家の周りを探しました。

しばらくして車の下に隠れているのを家族が発見しましたが、私がそこに駆け付けたときには、また姿が見えなくなっていました。

再び見つけたのは、我が家のすぐ近くの用水路の脇に身を埋めて伏せている姿でした。

私は猫に少しずつ近づいて、持っていたバスタオルでくるんで抱き上げ、家族に持ってきてもらったキャリーに入れようとした瞬間です。

急に暴れだし、私の手を抜けて走り出していきました。

私は無我夢中で猫を追いかけました。

あとからわかったのですが、猫は追いかけるとどんどん逃げていくのだそうです。

そんなことも知らず、必死で追いかけて、とうとう見失ってしまいました。

そこから35日間、私の捜索劇が繰り広げられることになりました。

まず行ったのは、警察への届け出と保健所への連絡でした。

迷い猫として誰かが警察に連絡してくれるかもしれません。

また、万が一事故などにあった場合、亡骸を引き取るために保健所にも連絡をしました。

迷い猫の掲示板にも掲載してもらいました。

そして急いでチラシを作りました。

猫の写真と特徴、私の携帯番号を書いたチラシを、近所に一軒一軒手渡して声をかけ、助けをお願いしました。

そしていつでも猫を入れられるように折り畳みのキャリー、猫が大好きな鰹節、懐中電灯を持って、猫が使っていたトイレの砂を撒きながら、ひたすら探し続けました。

もうどうしてよいかもわからず、ただ一生懸命探すしかなかったのです。

我が家の猫は体が大きいわりにとても臆病で、人見知りが強く、来客があったりすると物陰に隠れて出てこないような内気な性格なので、じっとどこかに身を潜めて出てこないのだろうと思っていました。

なので、見失った場所の近辺を何度も何度も懐中電灯で照らしながら探し続けました。

しかし、初めての外の世界では違う行動をとるかもしれないとも思いました。

違う猫に威嚇されたら驚いて遠くまで逃げて行くかもしれないし、お腹が空き過ぎたらどこまでも餌を探しに行くかもしれません。

なので、見失った場所から半径300mの所まで範囲を広げて、チラシを配り、歩き回りました。

家は猫がいつ帰ってきてもいいように夜中も窓を開けて、窓際に餌を置いておきました。

外には監視カメラや捕獲器も設置しました。

途中、大雨が降ったことがあり、猫が川に流されているかもしれないと思い不安で押し潰されそうになりました。

もう見つからないかもしれない・・・

何度もそう思いました。

しばらくすると何件か目撃情報が寄せられるようになりました。

目撃情報があった近くの家に監視カメラを置かせてもらうと・・・。

映っていました!間違いなく我が家の猫です。

恐る恐る草むらから出てきて、たぶん餌を探しに行っていたのでしょう。

久々に見る我が家の猫に、生きていてくれてよかった・・と心から安心しました。

そしてすぐ捕獲器を設置させてもらうようお願いをするためにそのお宅に伺ったとき、草むらから座って私を見つめる我が家の猫が・・・。

もしかしたら私の車の音を覚えていたのかもしれません。

発見しました。

やっと会えました。

見失った場所からわずか30mの場所でした。

そこは何度も何度も探し回った場所でもありました。

空き地の横には、縁の下に潜り込めるような昔ながらの古い家におじいさんがひっそりと暮らしていて、雨の日はそこにお邪魔していたのだろうと思いました。

名前を呼ぶと「ミャーミャー」と何度も何度も鳴いて、少しずつこちらへ近づいてきました。

迷い猫を探し出した時の捕獲の仕方は何度もネットで調べていたのでその通りにしました。

入り口を開けたキャリーを自分の横に置いて、しゃがんで名前を呼びながら餌でキャリーに誘導する、抱きかかえてはいけない、追いかけてもいけない・・・。

焦らず、ゆっくりと・・・

はやる気持ちを抑えながら、一生懸命自分を冷静に保ちました。

鰹節を手に乗せて名前を呼び、話しかけました。

猫は少しずつ少しずつ近づいてきて、私の手の上の鰹節を食べたあと、私の手に何度も何度も頭をこすり付けてきました。

その姿を見て、不安で寂しくて、長い長い35日間だったのだろうと、涙が込み上げてきました。

そして鰹節で誘導するとすんなりとキャリーに入り、捕獲できたのでした。

家に連れ帰ったあと、すぐにシャワーで綺麗にし、体重を測ってみたら、6.4キロあった体重が4.2キロまで減っていました。

ほとんど何も食べていなかったのでしょう。

本当にかわいそうなことをしてしまいました。

帰ってすぐ食べた餌は、鰹の水煮3本、テリーヌ2パック、鰹節でした。

ゆっくりとかみしめるように食べていました。

今回猫を捜索するにあたって、近所のコンビニや公民館、公園の掲示板にもチラシを貼らせてもらいました。

猫探偵の藤原さんにも電話してアドバイスを頂きました。

私の住む県の動物保護センターは、迷い猫については扱っていないとのことで、どうしていいかわからず、わらおもすがる思いで、ネットで調べて相談に乗って頂けそうな岩手県の命の会にも電話ました。

私が他県の人間であるにもかかわらず、親身になってアドバイスしてくださった命の会の方々、そして猫探偵の藤原さんには本当に感謝しています。

近所の方々もたくさん協力や応援をして下さり、本当に有難かったです。

そして、今回このような大失態を犯してわかったことがあります。

それは、我が家の猫は私にとってかけがえのない存在だということです。

我が家の猫は怪我をして迷い込んできたところを保護したという経緯があります。

なので、私は、「保護してあげた」という気持ちがどこかしらにあったように思います。

でも今は「保護させてもらった」のだと感じています。

この子がいなくなって、どれほど悲しかったが、辛かったか・・・

この子はかけがえのない存在・・・

この子に元気や癒しをもらって生かされているのは私のほうだったんだと気付かせてもらいました。

悲しくて辛い経験で、猫にもとても可哀そうなことをしてしまったけれど・・・

私には必要な経験だったのかもしれません。

35日もかかったけれど無事に保護できたからそう思えるのかもしれませんが、この経験に感謝しかありません。

でももう二度とこのようなことがないように・・

ちゃんとすべての窓に脱走防止の柵を取り付けました😊

今日も飼い猫スーちゃんが元気で私の傍にいてくれて、本当に幸せです。

ありがとうスーちゃん😊

もう一人にしたりしないからね!

それと、「猫は三日で飼い主を忘れてしまう」というのは迷信です。

1ヵ月以上経っても、ちゃんと私のこと覚えていましたから😊

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